男性による在宅介護

在宅介護の工夫など

妻のオムツ交換

 在宅介護にとって“おしもの世話”とりわけ便失禁の処理が大きなハードルとなります。このハードルに直面すると「もう限界」と言って在宅介護を諦めてしまうことがよくあるようです。確かに非常にきつくて辛い作業ですがここが在宅介護の正念場で、このハードルさえ超えてしまえばあとは肉体的にきついことはほとんどなくなると思います。
 私は寝たきりになってしまった妻を在宅介護してきて、訪問介護のヘルパーさんがオムツ交換をする際には、妻の体を支えるなどちょっとしたお手伝いをしてきました。当然、訪問介護のタイミングとずれた便失禁もあります。妻が気持ち悪い思いをしているかと思い、見よう見まねで一人でオムツ交換をしてみました。はじめは最低限の処置だけで精一杯でしたが、しだいに要領が分かり、しっかりと準備をすればかなりきれいにできるようになりました。
 インターネットなどで、動画による作業要領もたくさん紹介されています。是非そちらも見ていただけたらと思いますが、介護素人の私一人でもできたオムツ交換を具体的にご紹介することで、少しでも介護生活のお役に立てればと思います。

 手順1
 まず第一に、本人に声がけして作業を始めることが大切です。
もうコミュニケーションが取り辛くなっていても、「気持ち悪いよね。これからきれいなオムツに交換するからね。」と、理解と協力を求めることです。この声がけをすることで、自分自身の作業に対する覚悟と妻に対する成果を確認することができます。
また、必ずカーテンやドアを閉め本人の尊厳を大切にするとともに、ぬるま湯による体の一部洗浄に適した室温を確保します。

手順2
 次に、用意するものです。
①古い新聞紙
②大型ビニールごみ袋
③陰洗用のタオル
④お湯を入れた陰洗用バケツ
⑤お湯を入れた穴あきペットボトル
⑥泡石鹸
⑦替えオムツ
⑧替え尿取りパット
⑨陰洗時用の大量吸収尿取りパット
⑩300×700程度のフラットシート
⑪カットされたトイレットペーパー
⑫使い捨てのビニール手袋
⑬買い物ビニール袋
⑭蓋つきごみ箱
⑮トイレに流せるお尻ふき用ウエットティッシュ
⑯着替え

⑮⑯は外出時など必要に応じて用意することとなります。

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 手順3 
 ベッド上で一人で汚れたオムツを交換するには、片腕で本人の体を支えながらもう片方の手で作業をしなくてはなりません。そのため、用意したものを作業しやすいように事前に配置します。
まず、汚れたオムツなどを置くために①古い新聞紙を広げます。本人の体を支えた状態で汚れたオムツなどを処分するので、ベッドの外に放り投げることになります。私はポータブルトイレをベッドのそばに引き寄せ、その座席に新聞紙を広げることで、ベッドとの高低差を少なくして汚物の飛散防止に努めました。
次に、②大型ビニールごみ袋を床に敷いた上に、③陰洗用のタオル、④お湯を入れた陰洗用バケツ、⑤お湯を入れた穴あきペットボトル、⑥泡石鹸を用意します。
②大型ビニールごみ袋は、タオルを濯ぐときに汚水が回りに飛び散っても気軽に捨てることができます。③陰洗用のタオルは、広告名などが入った頂き物の薄手の白いタオルに限定しました。⑤お湯を入れた穴あきペットボトルは、500mlのペットボトルの蓋に千枚通しで小さな穴を数か所空けたものと、ドレッシングなどを入れる少し先の太いノズルが付いたものの二種類を用意しました。汚れ落としの石鹸は泡状の物が使いやすいと思います。

 手順4 
 ベッドで作業をする際の準備です。
⑦替えオムツ、⑧替え尿取りパット、⑨陰洗時用の大量吸収尿取りパット、⑩300×700程度のフラットシート、⑪カットされたトイレットペーパーを、作業の邪魔にならずに手が届くところに配置します。
 ⑪カットされたトイレットペーパーは適度な長さにカットしたものを状況に応じて数枚用意します。片手で作業をすることになるのでロールのままですと、片手でカットすることができないだけでなく、作業中にロールがベッドから転がり落ちてしまうことがあります。
次に、⑫使い捨てのビニール手袋を二重に重ねて手にはめます。作業で汚れてしまった時に外側の一枚を外せばすぐにきれいな手袋の状態に戻せる、訪問介護のプロから教わった技です。

 手順5 
 いよいよ作業開始です。
その際、「お待たせしました。これからオムツをきれいにするからね、少し我慢してね。」と、再度声がけします。先ほどの声がけはもう忘れてしまっているので、いきなりズボンを下げられオムツを外されては、人間として当然抵抗します。
 オムツを広げ体から少しずらすことで汚物と体を離した状態にします。⑪カットされたトイレットペーパーを使って、大まかに体についている汚物をふき取り、①古い新聞紙の上に捨てます。
次に汚れたオムツ・パットを抜き取るのですが、声がけしてから片手で臀部を少し持ち上げ、できることであれば汚物とパットを抜き去り、オムツの汚れていない部分を使って、体の汚れをふき取りながら引き抜きます。その状態を維持しながら、引き抜いた汚物パット、汚れたオムツを①古い新聞紙の上に捨て、⑨陰洗時用の大量吸収尿取りパットを臀部の下に敷き込みます。もちろんオムツが汚れていなければオムツを陰洗用にそのまま使います。臀部を⑨陰洗時用の大量吸収尿取りパットの上に戻し、再度⑪カットされたトイレットペーパーを使って、汚物をふき取ったうえで、⑥泡石鹸、⑤お湯を入れた穴あきペットボトルで汚れを良く洗い流し、③陰洗用のタオルで良く拭き取ります。

 手順6 
 体を傾けて臀部の清掃とオムツの着用です。
⑩300×700程度のフラットシートを体を傾ける方の腰の下に敷き込み、作業中の失禁に備えます。⑧替え尿取りパットを装着した⑦替えオムツを広げて準備します。ベッド側面の落下防止手すりを確認して、声がけしてからその方向に体を90℃以上傾けます。できれば、本人に手すりを掴んでもらってその姿勢を維持してもらいます。
臀部の汚れを③陰洗用のタオルで良く拭き取り、⑨陰洗時用の大量吸収尿取りパット、⑫使い捨てのビニール手袋を①古い新聞紙の上に捨て、⑧替え尿取りパットを装着した⑦替えオムツを位置を確認しながらベッドの上に敷きます。
声がけして体をもとの状態に戻し、オムツを装着します。

 手順7
 片付けです。
①古い新聞紙の上には、汚れたオムツ・パット、⑪カットされたトイレットペーパー、⑨陰洗時用の大量吸収尿取りパット、⑫使い捨てのビニール手袋などが集まっていますので、それらを①古い新聞紙でくるみます。それを⑬買い物ビニール袋に詰め込んで、バレーボール大の大きさに圧縮してから口を結び、⑭蓋つきごみ箱に捨てます。

 以上が私が行ってきたオムツ交換の手順です。
自分自身オムツを着けて便失禁の体験はありませんが、もしそのような状態になった時は一刻も早く不快な状態から助けてもらいたいと思います。また、立位の状態で便失禁をしてしまった時に、オムツ交換の為にベッドに横になることには必死に抵抗すると思います。
 豊かな在宅介護を送るうえで、本人に寄り添ったオムツ交換の準備と工夫はとても大きな要素だと思います。