男性による在宅介護

在宅介護の工夫など

介護におけるSNSの活用

 認知症の家族を介護していると、外出の機会が少なくなり社会から取り残された孤独感に襲われることがあります。ましてや新型コロナウィルス騒ぎで外出を控えなければならない昨今、認知症の介護家族にとって非常にストレスの溜まるを状況です。そんな時、家にいる時間を使ってSNSを始めてはどうでしょうか。
 SNSには、Line、Twitter、ブログなどいろいろありますが、私はFacebookを良く利用しています。Facebookは実名による登録が原則ですので、発信内容の信頼性が高い割に煩わしさが伴わない緩いつながりができます。また、発信内容を「公開」「友達の友達」「友達のみ」「特定の人のみ」「特定の人以外」「自分のみ」と、プライバシーに配慮した色々な形態で参加することができます。

 私はアルツハイマー型若年性認知症の妻を在宅介護している様子をFacebookで「友達のみ」に発信していました。そのため、私達の置かれている状況を理解している知人に限定して“友達”リクエストを送りました。ただ、同年代の友人達にはインターネットを使う事すら限られているうえにFacebookを利用している者が少なく、初めはほんの数人にしか“友達”リクエストを送ることができませんでした。
 Facebookでは「おいしいものを食べた。」とか、「きれいなところに行った。」など「プチ幸せ発信」と言われているようです。その発信を観た人が「いいね」と反応してくれることで、発信者のプ「プチ幸せ」が増幅して、また発信を繰り返すモチベーションになります。私の場合も、妻とのお出かけ、家でのお茶会、ペットや花などを写真にとって簡単なコメントと共に発信しました。
 わざわざ友人たちに訪問して頂くことや電話をかけて頂かなくても、「未だ外出ができている。」とか、「食欲は変わらない。」といった、妻の生活の様子を緩やかに伝えることができます。そのFacebookの発信に“友達”たちが「いいね」の反応をしてくれると、自分たちとその“友達”とのデジタルを介した繋がりが確認出来ることで、少なからず孤独感が癒され、社会に参加できている安心感を得られました。また、まめに妻と外出したり、食器を来客用に取り換えて撮影するように、Facebookへのモチベーションが、介護の質を向上させる結果にもつながりました。
 Facebookの最大の魅力は様々な情報から“友達”を広げてくれることです。妻の教え子、娘の友人など、インターネットに強い世代にも少しずつ“友達”になっていただき、妻の様子を伝えることができるようになりました。
「いいね」の反応はあまりないのですが、久しぶりに参加した同窓会などで「Facebook見てるよ。」とか、年賀状で「Facebookをいつも見ています。」と書いていただいたりして、Facebookを介して多くの方々にも私達を静かに見守っていただいていることに気がつくことができました。
 ここ数年でFacebookに必ず「いいね」の反応してくれた貴重な“友達”三人を、立て続けに失ってしまいました。その“友人”達には今でもFacebook上の“友達”に残ってもらっていて、彼らと交わした過去の交信を時々のぞいては、心のネットワークを繋げています。
 Facebookなどのデジタルを介した繋がりはあくまで一つの手段でしかなく、何と言っても温もりを感じられる人と向かい合った繋がりに勝るものはありません。ただ、そのことができにくい環境に置かれてしまった時に、心の支えになる有効な手段になりえると思います。

 妻を看取って在宅介護から解放されましたが、残された私の人生に妻からも「いいね」がもらえるようにFacebookを続けています。