男性による在宅介護

在宅介護の工夫など

ビデオ会議システムと介護

20200715                                     ビデオ会議システムと介護

 

1 コロナ禍における介護

 新型コロナウィルスの感染拡大による外出自粛要請で、家族会による各種催しが中止され、ディサービス等の施設利用も制限されています。本人や家族が感染者、濃厚接触者となってしまう不安が募る中、家の中にいるしかない介護生活で、本人や家族のストレスが溜まる日々が続いています。

また、施設入居者の家族においても直接スキンシップできる面会が制限されるようになり、数か月も本人の表情を確認することすらできないなど、家族の心配が大きくなってきています。

 今こそ同じ苦しみを分かち合える介護仲間との交流や情報交換が強く求められます。

 そこで、認知症家族会でビデオ会議ソフトZoomを使った家族交流会を4月に立ち上げ、家族同士のおしゃべり、情報交換ができる機会を設けました。

 

2 ビデオ会議システムを活用した家族交流会

 家族会ではこれまでに40回以上の家族交流会を開き、約400人の参加がありました。

会に参加してモニター画面に顔が映し出されると、自然と皆がモニターに手を振り笑顔で向かい入れてくれます。モニター画面ではありますが久しぶりの介護仲間の賑やかな顔を見て、一緒に参加されたご本人も笑顔になられたこともありました。そこで時折、参加者の了解を得てモニター画像で記念写真を撮り参加者にお配りしました。

 ビデオ会議システムの良い所は何と言っても気楽に参加できることです。時には本人の食事を介助しながら参加したり、会の途中であっても画面を中断してトイレに連れて行くことができます。また、これまで定例の家族会に参加できなかった遠方在住の方や、外出が難しい家族も参加できるようになりました。さらに、在宅介護者と施設入居者家族、介護中の家族と看取った家族などグループ分けることによって、気遣いの少ない内容の濃い意見交換が可能となります。

 在宅介護をされているご家族からは、「とにかく感染しないように家で巣ごもりしている。」「マスクを嫌がるので外に出にくい。」「濃厚接触者になったり感染したら即入院させられてしまうが、環境の急激な変化に認知症が進行してしまうので一緒の部屋に入院させてほしい。」「在宅でも感染による治療が受けられる訪問治療を充実してほしい。」といった切実な意見がありました。

 施設入所されているご家族からは、「3か月以上面会できなかったが、ようやく予約で週1回10分間、ガラス越しの面会ができるようになった。」「ガラス越しだと、せっかく行っても私が分からないかも知れない。」「いつも部屋でマッサージしてあげていたのだが、面会した様子では拘縮が進んでしまっているようだ。」といった切実な意見がありました。

 

 3 家族会や介護での活用

 これまで家族会に参加できなかった遠方在住者や、外出困難者がビデオ会議システムでの家族交流会を体験すると、集会施設で行う家族会が再開されれば、そこにビデオ会議システムでの参加が求められるようになります。6/24に飯田橋のボランティアセンターで開催された家族会で、ご自宅からビデオ会議システムで参加されたご本人とご家族のお二人と会場参加者とがノートパソコンを介して繋がることができました。

 また、介護施設での体操やお茶の時間等の日常活動の様子を介護施設からビデオ会議システムを活用して発信すれば、事前に登録した家族が自宅から参加することができます。改まった“面会“という形式ではなく、ご家族も自宅から一緒に体操やお茶の時間等に参加することができます。

 さらに、ビデオ会議システムを活用して在宅診療や認知症初期集中支援活動を充実することが可能となります。移動や会場確保などの手間が不要となり効率的な診療、活動が行えるだけでなく、必要に応じて気軽に関係する多職種の参加を呼び掛けることができることで多面的な意見交換を行うことができます。そのことで、医療と介護と家族が連携した総合的な対応、認知症の早期発見、早期対応が可能となります。

 

4 ビデオ会議システムの課題

 ビデオ会議システムを家族会や介護で活用するためには、介護家庭、介護施設、公共集会施設、訪問診療や認知症初期集中支援チームにビデオ会議が行える環境整備が求められます。ビデオ会議ソフト内蔵のパソコンやタブレット、必要に応じてWeb会議用カメラ、マイク、大型モニター等の備品が求められます。また、パソコンやタブレットの操作を支援するパソコンボランティアも必要になると思います。

 ビデオ会議システムなどのデジタルを介した繋がりはあくまで一つの手段でしかなく、何と言っても温もりを感じられる人と向かい合った繋がりに勝るものはありません。ただ、そのことができにくい環境に置かれてしまった時に、モニター画面による繋がりであっても心の支えになる有効な手段になりえると思います。

 コロナ禍の期間だけでなくても、外出の機会が少なくなってしまう認知症の家族にとって、ビデオ会議システムの整備は介護生活を強力に支援する不可欠なツールになると思います。